げねのチラ裏

げねのブログです。だいたい音楽について語っていますが、たまに他の事にも触れます。気が向いた時に更新していこうと思います。

最近見つけたお気に入りのボカロ曲紹介 -2022年4月編-

 こんにちは。先日、サカナクションアジカンのアルバムが同日にリリースされました。一気に出費がかさむときついのでアジカンは少し時間をおいて買おうと思ったのですが、結局両方すぐに買いました。あとamazarashiの新譜もとても良かったです。

 最近は他にザ・リーサルウェポンズ、XTC、Thundercatなどを聴いています。また、見識を広げるためにラブライブの曲にも手を出したりしている今日この頃です。

 しかしボカロもちゃんと聴いています。最近はKiiteを始めたのもあって、気に入った曲をプレイリストにしたりしています。ということで今回は、そのプレイリストを基にお気に入りのボカロ曲を評論家気取りで紹介していこうと思います。

 曲を見つけるのに使用したのはKiite、ニコニ広告、日刊トップテン!VOCALOID & something (通称 日刊ぼかさん) などです。クレジットは基本的に「タイトル / 作詞・作曲者 / 歌唱ボカロ」のように表記しています。

 

 

於江宇伊阿呆の諸行は無常 / ショミ / 初音ミク

 まず最初に紹介するのはこの曲。この曲を初めて聴いた時、自分は宇宙のような壮大さを感じた。ワブルベースもあり、トランス的なシンセサイザーもあり、さらにはヒップホップ的な要素や英語のサンプリングも使用。あらゆる手法を横断し、それらの要素が1つの世界を作り上げる壮大な曲。

 

やめろ!聴くな! / SLAVE. V-V-R / 結月ゆかり

 まずイントロのノイズのループで引き込まれる。そこにピアノ・ベース・ドラムがなだれ込み、そこからはとにかくノリノリになれる曲。SLAVE. V-V-Rさんの楽曲の大きな個性であるピアノは1作目から存在感を放つ。不穏な歌詞とコミカルな合いの手の落差も良い違和感を醸し出している。

 

このピアノでお前を8759632145回ぶん殴る / SLAVE. V-V-R / 猫村いろは

 やはりこの曲の1番の聴きどころはピアノである。タイトルにピアノを冠しているだけあってとてもかっこいい。さらにその後ろで鳴るベースラインもとてもかっこいい。ピアノトリオ編成の曲って何でこんなにかっこいいんだろう。もしかしたらピアノトリオというシンプルな編成であるからこそ、曲がかっこよくないと成立させられないのかもしれない。

 

2ちゃんねらーのとある空想 / はんごうすいはん / 初音ミク

 ボカロの魅力の一面に、手作り感・ローファイさがあると思う。それをかなり真正面から感じることができる曲である。初期衝動をそのまま閉じ込めたような楽曲と、2000年代のインターネットの空気感が融合したような感覚。動画にはネタ曲投稿祭2021秋のタグがついていた。ネタ曲とは。

 

loops and loops / sat / KAITO

 ジャンルとしてはUK Garageというものであるらしい。ダンスミュージックの1ジャンルということで、やっぱりリズムがいい。ダンスミュージックのビートにアコースティックなウワモノが乗り、メロディアスかつ踊れる曲になっている。

 

めちゃくちゃデカい犬 / ダイナミック自演ズ (カルロス袴田・初音ミク・音街ウナ)

 まず、歌詞と映像のインパクトが凄まじい。コンビニ駐車場に収まるほどのデカさだった犬が、隕石から地球を守って帰宅した後は東京ドームを優に超えるほどデカくなっている。こうしたトンチキな世界観をキャッチーなメロディーで歌われるもんだから、こっちもデカい犬の存在をいつの間にか受け入れてしまう。

 

きみはだいじょうぶ / ダイナミック自演ズ (カルロス袴田・初音ミク・音街ウナ)

 いろいろあり某ライバー集団の情報をちょくちょく仕入れている途中、あるイベントでライバー達が歌っていて気になった曲。もしかして「めちゃくちゃデカい犬」の人の曲かなと思ったら当たっていた。昨今ここまでストレートな曲を書く人は珍しいと思うし、ボカロが歌っているおかげか歌詞の前向きさによる嫌らしさもあまりない。音楽を自由に楽しんでいる純粋さが曲の力になっているのだろう。

 

 ちなみに、カルロス袴田さんはTwitterPOLYSICSの「National P」をド名盤と評していた。めちゃくちゃ信頼できる。

 

はらぺこ / ごーぶす / 歌愛ユキKAITO

 Lo-fi Hiphop的でチルな雰囲気を纏う1曲。肩の力が抜けたサウンドの心地よさがボカロと上手い具合に融合している。リラックスしたいときに聞きたい1曲。あとボカロ曲を漁った時に見つけられるジャンルの幅広さに、改めてボカロ音楽の懐の深さを感じる。

 

窓辺のモノローグ / higma / 初音ミク

 higmaさんがyosumiさんへ提供した楽曲のセルフカバー。高校の頃のクラスメイトがyosumiさんと一緒に色々やっていたのを知り、そのつながりで見つけた曲。こうしたタイプのエレクトロニカはたくさんあるけれど、抒情的なメロディーがとても良いので何度も聴きたくなる。途中でスローダウンするアレンジもフックが利いていて良い。

 

ラジオ体操第九次元 / 螟上?邨ゅo繧 / 結月ゆかり

 この方のことは少し前に「夏中十八界」という曲で知ったのだけれど、聴いた時に「まんまナンバーガールじゃん!」と思ったことが強烈に記憶に残っていた。しかしこの曲ではナンバーガール的な要素は残しつつ、テンポを落としヘヴィさを強調することによって、ナンバーガールとは別ベクトルの破壊力を出している。こういうスタイルの曲がもっと聴きたい。

 

シャルル (カバー) / 夢枕 / MEIKO (オリジナル:バルーン / flower)

 今回リストに入っている中で唯一のカバー曲。シンプルに調声がすごいなと感じた。ボカロは使う人間によってその表情は大きく変わることを実感する。ギターは時代と共に進化しモダンなモデルも多く出てきているが、いまだトラディショナルなモデルの人気が衰えることはない。ギターのように、ボカロもトラディショナルなものの個性が評価される時代がいつか来るのではないだろうか。

 

ステラ / じん / 初音ミク

 じんさんの代表曲といえばカゲプロシリーズの楽曲陣だが、個人的には近年発表された曲の方が好きかもしれない (他にはRain Dropsの「オントロジー」など) 。じんさん自身さまざまなジャンルの曲を作ってはいるが、その中では解放感のあるバンドサウンドが自分は一番好きだと感じる。

 

hollow / ヒルヒ / 重音テト・初音ミク

 あまり他の曲のことを持ち出すのは好ましくないかもしれないが、初めて聴いた時にMr. Childrenの「フェイク」を思い出した。この曲には「フェイク」に通じるアンニュイさがあると思う。こういう雰囲気の曲って意外とあまりないもので、「フェイク」が好きな自分はこの曲を見つけて嬉しくなった。

 

おやすみの唄 / アイス芋P / KAITO

 どこか合唱曲のような雰囲気を感じるピアノバラード。初音ミクや可不のように広く使われているもの以外のボカロを調べると、そのボカロのコアなファンが作り手となった曲が見つかりやすいと感じる。そうした人は、周りに左右されず自分の作りたい曲を作る人が多いように思う。作り手の聴いてきた音楽の核が直に反映されているように感じておもしろい。

 

軒先通り魔性 / すこやか大聖堂 / KAITO

 エレクトロスウィングの要素を取り入れつつも派手になりすぎず、スタイリッシュな印象を受ける曲。個人的にエレクトロスウィングをJ-POPに取り入れたような曲はあまり好きではないのだが、そうした曲にありがちなあざとい感じが少ないので純粋にノれる。どこか「玄関を開けたらいる人」を思い出す歌詞も印象的。

 

100倍 / emon (Tes.) / 鏡音リン・レン

 ボカロ文化は一部のプロだけのものではない。音楽業界のメインストリームのような「音楽を生業とする」ことだけに価値を置くのではなく、一般の生活に寄り添っていることもボカロ文化の大きな魅力だろう。ボカロ界隈ではこういったストレートな、場合によっては泥臭かったりする曲こそ輝きを放っていると思う。そんなことが思い起こされる曲である。

 

tef / 市蔵・灯下はこ、/ 滲音かこい

 どこか懐かしく切ない気持ちになるサウンドと、何回も聴いてしまう中毒性を持つとても良い曲。抒情的で内向的なんだけれど重すぎず、しかしさらっと聞き流せないような毒を含んでいるような気がする。子供のころの記憶をひっくり返しているような... 気持ちいいところを突いてくる電子音とシャッフルのリズムがとても印象的。こういうスタイルの曲好きなんだけど何と呼ばれているんだろう。

 

幸いのすゝめ / 無期懲役のデモ置き場 / 重音テト

 単純に良い曲。ありがとうニコニ広告。こういう思いがけない出会いっていいよね。曲の方は一切小細工なし。歌詞とメロディの良さで曲の世界に引き込んでからの、ノイズギターがほとばしる終盤へと持っていく構成は圧巻。こういうシンプルな曲を聴かせるのが一番難しいと思う。凄まじい力を持った曲。

 

因果新年(波音リツボイパRemix)/ ちから / AIきりたん・ずん子・イタコ・めろう・No.7(セブン)・ナクモ・波音リツ

 NEUTRINOやUTAUなどの合成音声を使用したアカペラ楽曲。これはもう単純に楽しい曲。歌詞もユーモアがあって良い。人間がアカペラを歌うとキーが合っていても不協和音に聞こえることもあるらしいが (兄弟とかだと合いやすいらしい) 、この曲は機械だからこそきれいに合うのだろうか、聴いていて気持ちいい。あと発音も滑らかで、合成音声の進化に驚く。

 

DARUMA / いちた / 重音テト

 明らかにハヌマーンを意識した楽曲・アレンジだが、そこに乗るメロディーには往年のボカロ感があるのが面白い。また、中盤のファンクパートはZAZEN BOYSの「Honnoji」を思い出させるし、暴れるリードギターカシオマン感がある (ちなみにZAZEN BOYSにも「DARUMA」という曲がある) 。 オマージュ元がわかる人が聴くと2度楽しめる曲だろう。

 

ミサイルキラー / ただのCo / 鏡音リン

 バンドサウンド×ピコピコなシンセという王道ロック。この曲からはなんだか青春を感じる。爽やかだけれどどこか閉塞感がある感じがいい。やっぱり自分の根底にあるのは王道のロックなんだなと再確認。聴いているとなんだか懐かしい気分になる一曲。

 

おもさくらべ / おぼろはるさめ / KAITO

 ピアノバラードではあるが、途中でメロディーが変則的な展開になるなど一筋縄ではいかない曲。けどちゃんとポップしているところがいい。「きいてくれてありがとう」からのメロディーがPeople In The Boxを感じて好き。ところでさっきから曲の良さを表現するのに他のバンドを引っ張ってきすぎな気がする。語彙力よ。

 

ハッピーサイド / 夏秋霖 / 初音ミク

 シンセが主体のポップな曲。ループする中毒性のあるフレーズが耳に残る。しかし特筆すべきことは、サビではっきりと盛り上がるような構成ではないという部分である。自分はこの曲の「平熱感」がありつつもキャッチーな部分が好き。オーケストラヒットを使ったアレンジも曲の中でフックになっている。

 

日照雨に羊 / 森本侑樹野 / 可不

 クオリティがとても高い。ジャズを感じさせる心地良い雰囲気のバンドサウンドが耳にすっと入ってくる。森本さんは本人歌唱のソロアルバムを1枚リリースしている。ソロ活動のついでにプロモーションとしてボカロもやっている感じだろうか。調べてみると、演奏陣もガチのジャズ畑の人たちだった。卑怯だろ。高度な技術が必要なジャズ界で学びまくった人間には勝てねえもん。

 

おもしろいいきもの / ふるがね / 初音ミク

 柔らかく、どこかかわいい雰囲気の曲。1分半もないのが潔い。メロディーもキャッチーで、電子音を使ったアレンジが曲と合っている。「雲で跳ね返る」のメロディーが上がる部分が好き。緋世あかりバージョンもあり、そちらはアコースティックなアレンジが心地良い。

 

MKですけど / 溝野あわ / MEIKO初音ミク

 このブログを書き上げていつ上げようかなーと思っていた時に見つけた曲。いいぞこれ。ボカロリスナーを挑発するような歌詞にクールなサウンド。絶妙なバランスで入ってくるノイズが気持ちいい。間奏のシーケンスフレーズもかっこいいし、そこに入る「ソ#ド#」の2音だけのフレーズもメインのフレーズを引き立てていてとてもいい。溝野さんは何のシンセを使っているんだろうか。気になる。

 

 話は脱線するが、この曲を聴いててMoogのDFAM (Drummer From Another Mother) を思い出した。めちゃくちゃ気持ちいい音を鳴らすシンセなのだが、Moogのシンセとあってやはり高い。フリーのソフトシンセを使ってこれに似た音を出せないだろうか。


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 すごい文章量になってしまった。書くのに2ヶ月くらいかかった。

 音楽というのは曖昧なもので、どこが好きかを言語化することはかなり難しいです。それを何とか言語化しようとしたという部分で、自分の音楽観を振り返ることにもなったと思います。それと同時に結構疲れました。でも自分なりに上手くできたと思います。

 紹介した楽曲は下のプレイリストにまとめてあります。随時更新される予定なので、気になった方はチェックしていただければ幸いです。

kiite.jp